何かしょうもないこと思いついたんで書いたみた

吾輩は、宇宙人である。名前は山田太郎。実に平凡な名前だ。
実に平凡な名前ではあるが、中の人は平凡ではない。地球人ではないからだ。

 

地球人が宇宙人に対して抱いているイメージは、ヒト型のものもあれば、タコ型のもの、あたまでっかちで銀色でぬらぬらしたグレイと呼ばれる型のもの、あるいは凶暴な爬虫類などいろいろなタイプがある。それらはすべて想像の産物とはいえ、彼ら地球人が描く我々宇宙人の姿は当たらずとも遠からずといったところか。もちろん中にはヒト型の宇宙人もいる。

 

だが、僕、山田太郎はヒト型ではない。タコ型だ。
理由は明快。隣の火星から来たからだ。
そう。地球人が描く火星人の姿はタコの形。初めて見た時は正直ビビッた。
あいつら、僕たちに遭遇したことなどないはずなのに、何故僕らの姿を知っている。想像の産物?冗談だろう。衛星中継でもしたのかってくらいよく似てる。火星探査機が火星に着陸したのだってつい最近の話だ。何故。

 

取り乱してしまった。

 

地球調査員の火星人は地球上にいて、僕、山田太郎が担当しているのは日本の10代男性の生態調査。10代男性の調査なら10代女性に化けるほうがいいような気がするが、その役目は金星人が担当している。ちなみに金星人の調査員の中には某大手タレント会社に在籍するアイドルが多数いるのは宇宙人の間では周知の事実。
金星人はヒト型なので変装は必要ないが、我々火星人はタコ型なので地球で調査活動を行う時は変装は必須である。変装しなければ築地市場で売られて刺身にされるかタコ焼きにされるのがオチである。
宇宙人が地球人に化けるなど自由自在と思われているむきもあろうが実際は違う。
我々が地球人に化ける時はキグルミを着る。

 

日本の男子学生は、トイレを使う時、大、つまり個室を使うことを避ける傾向がある。
いや、避けるというより、むしろ恐れているといったほうがいいかもしれない。
学校で個室で用を足した男子は、同級生男子に発見されるやいなや、学校中にその事実をいいふらされ、からかわれ、さげすまれ、ネタにされる。彼の学校生活は恥辱にまみれた数年間となることが、その瞬間確定する。なかなか厄介だ。そういうことを抜きにしても、キグルミで用を足すのはなかなか面倒。よって、僕はできるだけ学校という場所で用を足すことがないよう、ずっと気をつけてきた。
だが、ある日のっぴきならない事情により、禁を犯さねばならぬ時がきてしまった。緊急事態を回避すべくトイレに向かう僕。そして、それを目ざとく見つけ僕の後を追う同クラのやんちゃな男子学生。
そんなことなど毛ほども気づかず個室に入り、大慌てでキグルミを脱ぎ、緊急事態を回避して安心した心持で宙を仰ぎ見ると同級生の顔がある。

 

奴はきっと、生涯忘れ得ぬものを見たに違いない。
個室を上から覗いて目撃したのは便座に座るタコ。足元にはヒトの皮。
奴の口から悲鳴が漏れ出るコンマ1秒、僕が奴の口をふさぐのが早かった。
奴の口をふさぐのと同時に個室に引きずり込み便座に座らせる。
奴が1秒でも早く落ち着くように、奴の背中をさすり、肩を撫で、頭を撫でる。
落ち着かせようと思ったのだが、どんどん奴が青ざめていくので、逆効果だったかもしれない。

 

仕方がないので、場を和ませようと思い、奴の目の前で
「コマネチ!」
かましたが、固まってしまった。
すかさず僕は次のギャグをかますためドアを開け、ダンディ坂野よろしく
「バイ」
と個室を退場。
5秒後、耳をつんざくような阿鼻叫喚が聞こえた。

僕、山田太郎はその日を最後に地球調査員としての職務を退いた。